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精子発見のイチョウ(小石川植物園



つかこうへい著 『弟よ!』

 主人公は文学賞をとったものの売れていない小説家である。この主人公(一郎)と両親、弟、故郷の人々、恋人との関係と一郎が巻き込まれる事件が小説の中心である。

 かなり変な奴かつ典型的な成金である父親、”相手のためにやってあげてるのに”という意識を強く持っている母親、歯科大学に裏口入学をしたことのコンプレックスを克服できない弟、農協の会計の実権を握っている鈴江など、ひとりひとりが一癖も二癖もある登場人物に取り巻かれて、優柔不断でありながら妙に潔癖な主人公が苛立ち、困惑し、やがて弟の、コンプレックスの打破のための挑戦に加わっていく、その心の動きは直接書かれてはいないが、この小説のなかで浮かび上がってくる。

 文庫で 270ページとけっして短くはないが、ノリが良くて読み出すと止められない、なかなかよい小説でありました。

(1990年11月)

角川書店
1990刊


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