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阿部譲二著 『塀の中の懲りない面々 2』
阿部氏はが作家デビューの時には、その履歴が話題になったものだけれど、いわゆる「進学校」に在学したことがあったためにマスコミにもずいぶん名前が出たものだった。
府中刑務所の中での生活の様子やそこで出会った人間たち(服役者・看守)の姿を描いている作品としてヒットし、映画化もされたシリーズの第2作である。 阿部氏が人間を描く描き方は非常に温かい。その「温かさ」は、犯罪という行為を犯罪者という人間に原因があると見るのではなく、なんらかの原因が人間に犯罪を犯させ犯罪者にする、と見るところに’温源’があるように思う。 興味深かったのは、塀の中での行為によって服役者に恨まれている看守たちが新宿の映画館へさえおいそれとは行けないというエピソード。出所した元・服役者にどこで出会うかわからないので、電車に乗れば府中から数十分の距離の新宿に遊びに行けない。服役者だけではなくて、看守の方も「塀の中」になってしまっているようです。 (1993年07月) 文芸春秋社文庫 1990 |