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きもちよく買物しよう(ピープルツリー



相田洋著 『NHK 電子立国日本の自叙伝(上・中・下・完結)』

 NHKスペシャルとして放送された内容を、チーフディレクターがノンフィクションとして書き下ろしたもので、とにかく面白いの一言である。
 どれくらい面白かったかというと、上巻を読み終ってから中巻が終わるまで二日、さらに三日で下巻を読み終り、完結巻は二日。とにかく電車の中でも、寝床でも、空いてる時間は全てこの本に使っていた感じである。そのくらい面白かったのだ。

 では、この「とにかく面白い」本はどんな本なのか。この本には、ふたつのことが書かれていると思う。

 ひとつは技術――トランジスタから集積回路(IC)そして、LSI、チップ、パソコンへ――である。技術の進歩について、非常に興味深い事実が多数紹介されている。だが、技術(そしてその進歩)についてだけが書かれているなら、1週間で4冊を読んでしまうほど面白くはならないだろう。この本の本当の面白さは、書かれているもうひとつのこと――人間ドラマ――によって生まれている。

 “技術の進歩”の陰には必ずその進歩を生みだした人間たちの活動がある。そこで行なわれていることは、科学的な行動でもなければ、合理的な行為でもない。直感的で非合理で極めて人間臭い出来事が起こっている。この本は、現代社会を支えている最先端の技術に至るまでの技術の進歩の歴史を、“人間”という側面から描き出している。そこにこの本の魅力が生まれていると思う。

 理科系、特に工学系・技術系の人間の人間臭さ――それは職人にも通じる部分があると思う――は、あまり紹介されることはない。が、この本を読めば、エンジニアと呼ばれる人間たちの人間臭さを感じとることができるのである。


(1993年02月)

日本放送出版協会
1991~2


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