荒谷氏の本を紹介するのは３冊めになる。全て恋愛・結婚についてのハウツウを扱ったものである。

　以前にも書いたように、荒谷氏は恋愛・結婚を極めて真面目に取り扱っている。以前の２冊は「24歳から30歳までの独身女性」を想定して書いたのに対して、今回の本は20歳前後の女性を対象に「いまどきの女のコが、特にぶつかりやすい悩みをピックアップして、『恋の常識』としてまとめてみることになった」と荒谷氏は述べている。

　そういうわけで、17歳から24歳までの女性たちからの相談の手紙に答えるというスタイルで、様々な問題についての荒谷氏の考え方が展開されています。書かれていることは、まあ、まともというか、冷静かつ正確というか、そういう印象です。荒谷氏は自分より若い女性たちに向かって、一時の視野の狭い判断ではなく、一歩引いて自分と自分の置かれている状況を見極めてから判断することを薦めているようです。まあ、この姿勢は３冊を通じて一貫していますが。

　ただ、私が最近”ステレオタイプ”にこだわっているせいか、想定されている女性像・男性像・幸せ像が「多分にステレオタイプであるなぁ」という印象を持ちました。これは逆に言うと、取り上げられている問題がある意味で普遍的であるということの裏返しなのかもしれません。ま、ステレオタイプがすべて悪い訳ではなく、特に悪い意味・侮蔑の意を含まなければ便利なものですから。

（1991年08月・筆）

廣済堂
文庫
1991