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渥美雅子著 『女弁護士の事件簿』

 この本は渥美氏が扱った事件を紹介したものである。

 この手の本を読むたびに「事実は小説より奇なり」であると同時に「事実は小説よりステレオタイプである」とも思う。ほとんどの事件はそのまま小説に書かれていたとしたら、話の展開が「当たり前」すぎて「ありきたり」とか「現実をなぞっただけ」とか言われるんじゃなかろうか。まあ、それは小説が事件の連鎖(つまり事実)以上のものであることを別の言葉で言っているだけなのかもしれないけれど。

 この本の中で一番意外だったエピソードは、弁護士が外で元依頼人に会った場合、つい彼・彼女を避ける、知らないふりをするということ。

 依頼人は弁護士に「弱味・人に知られたくないこと」を知られているわけで、事件が終わると会いたくないという感情を持つ。それを思うために、弁護士の方で元依頼人をつい避けてしまう、知らないふりをするというのだ。言われてみればそういうものだろうと思うのだけれど、言われるまでは思ったことも無かった。
 こういうのを想像力の欠如というのかしらん?


(1993年08月)

中央公論社
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