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飯田真・風祭元編 『分裂病 引き裂かれた自己の克服』
統合失調症(改名前の本なので書名は分裂病になっている)について全般的に書かれている本である。
統合失調症がどういう病気なのか(臨床像・症状・診断・予後など)。 病気の原因(遺伝的要因・神経生化学・生物学的な発症機構・状況因・家庭因・社会因子)。 治療法(薬物療法・精神療法・生活療法と作業療法・家族療法)と社会復帰(リハビリテーションと再発予防)。 統合失調症と現代社会との関係や文化との関連など。 以前の“精神分裂病”という名称は、この病気の実際に相応しくないものであり、そのため社会に無理解と差別が生じている部分があるという批判があった。医学的な用語(訳語)として不正確なわけではない“精神分裂病”の語だが、社会的に歪んだイメージを形成する役割を果たしてしまったのである。いろいろ議論はあったものの、病名が変えられたのは良かったと思う(同様の問題と対応は「認知症」でも行われた)。 統合失調症は「不治の病ではない」。だが、難治性のものもあり、その原因と治療法(原因に対する考え方が変れば治療法も変る)も多様である。こうした状況では、(ある程度)試行錯誤的に、本人に適する治療法を見出すことになるのは当然だろう。 薬物療法も優れた「抗精神病薬」が使われるようになり、患者の興奮状態を抑えることが可能になったといっても、効かない症状もあり個人差もあるなど、万能なわけではない。 病気の機構にも不明なところが多く、統合失調症の患者を身近にもつ人間が何に気をつけ、何をすればよいのかに至っては、正解を教えてくれない ―― とにかく受け止めるしかない ―― のである。 本書は1970年代の末の本で出版後すでに三十年が経過しているので、2009年に読む価値があるかどうかは疑問だろう。 (1992年08月/2009年09月) 有斐閣 1979 |