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梅原猛・埴原和郎 『アイヌは原日本人か』
日本人の起源という、古くて新しく百家争鳴百花繚乱いい加減なことがいいたい放題いわれていてあれやらこれやらわけのわからなくなっている問題について、歴史学特に古代日本に興味を持っている梅原氏が、自然人類学者の埴原氏と対談したおりの記録である。
この本が生まれるもとになったのは梅原氏が「ずっと日本および日本文化のことを考えてきたが、それにはやはり、日本人を自然人類学的に正確に把握することが必要であることを、最近とくに痛感しつつある」ので「現在の日本の代表的な学者」である「埴原氏に語って」もらおうと考えたことである。梅原氏が序に書いていることだが、この本は優れた自然人類学の入門書になっており、同時にアイヌと和人との自然人類学的な知見について知ることのできる優れた本である。 さて、具体的な内容を誤解をまねきつつ(ん?)もいくつか紹介する。 まず、原日本人が来たのは北からか南からかという問いについては「北」という答え(単純にシベリアの方からとは思わないように)が述べられている。そして沖縄の人もヤマトから「南下」しただろうという推測を述べている。 アイヌの和人との関係については、従来のアイヌ・日本人異人種説を否定している。アイヌは「白人」ではなくモンゴロイドであること、アイヌも和人も祖先は縄文人であること、縄文人から「小進化」の結果としてアイヌと和人に分かれたこと、を述べる。 さらに、近畿人は朝鮮半島人に近いこと、西日本人と東日本人には岐阜を境に差異があること、琉球人とアイヌと現代日本人は正三角形をなすような関係であり、琉球人も縄文人からアイヌ、和人(ヤマトンチュウ)とは違った方向に「小進化」したものと考えられること、が述べられている。 対談形式なので読みやすく、高校生なら十分楽しめる本であろう。 (1992年03月) 小学館 創造選書 1982刊 |