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加藤諦三著 『人生の悲劇は「よい子」に始まる』
まずこの本の腰巻のコピーの引用から始めましょう。そこにはこうあります。
「なぜ、素直で明るく従順な『よい子』が問題なのか? それは、『よい子』とは、しばしば〔精神的な死〕でもって人生を始めた人たちであるからだ」。 この本は「よい子」とはどういう子どもであって、どうしてそういう子どもになるのか、「よい子」であることがその子どもにとってどういう意味をもつのか、どうしてそれがその子どもにとって不幸であるのか、「よい子」として育ってしまった大人が自分の抱える問題を解決するにはどうしたらいいのか、といったことを記している。 くわしい内容は是非読んで戴くとして、「よい子」とは何? という問の答えについて簡単に紹介しましょう。 「よい子」というのは「親から見捨てられることに対する恐怖」ゆえに「自分の本性を裏切る」ことを身につけてしまった子どもである。 この「見捨てられる恐怖」を克服できないままの大人は、見捨てられることを恐れるために肩に力が入ったり、自分も相手も信頼できなかったり、あるいは拒絶されることを恐れ、拒絶されることに傷ついてしまうため、自分を守るためにひとに迎合したり、とりいったり、お世辞をいったりすることになると著者は言う。 こうして自分の本性を押し殺して、人に拒絶されまいとしてしまうこと、すなわち「よい子」であること、が人間をどのように歪めていくのか。著者は自分自身の経験――とくに父親との関係――から考察している。 この本で論じられているのは基本的に”親子関係”での「よい子」の問題であるが、学校や会社など、さまざまな人間関係において同様の議論が成立するような気がする。あなたも、この本を読んで、自分自身と自分のまわりとの人間関係を見直してはいかがでしょうか。 (1990年11月) フォー・ユー発行 日本実業出版発売 1990刊 |