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クイーン著 『完全犯罪大百科 悪党見本市』 (上下)
気分ののらないときは、推理小説に限ります。
前々から悪人を主人公にした完全犯罪の成功する小説を読みたくて、無いのかなあと思ってました。ま、特に探すことはしなかったけれど。で、この本をたまたま見つけた時は、うれしかったですねえ。 というわけで、この本は、タイトルにもある通り犯罪者を主人公とし完全犯罪が成功する短編推理小説を集めたアンソロジーです。 訳者によれば、編者の「エラリー=クイーンは本書の編集とその下準備になんと十五年という歳月をかけている」そうで、その最大の原因は「完全犯罪の成功を扱った名作の数の少ないこと」にあるらしい。 推理小説のあらすじを教えてしまうなんて野暮なこたぁしたくねぇので、中身にゃあ触れないことにして、扱われている犯罪の種類だけを簡単に紹介しやしょう。 上巻では、殺人・泥棒・詐欺師が登場し、下巻では、詐欺師・悪徳弁護士・追いはぎ・贋造師・密輸人・すり・山賊・ぺてん師・トランプいかさま師・背任横領者・組織暴力団が顔を見せる。 ふとここで思ったことを書くと、国語の教科書に推理小説って載ってるのかしらん。推理小説で授業すると、なんかおもしろいことができるんじゃないか、なあ。 あとがきによると、編者にこのアンソロジーをまとめようという夢を持たせたのはジョージ=バーナード=ショーという有名な文学者の文章であった。彼はこう書いているのだそうだ。 「(前略)実在や物語中のもっとも悪名高い人物たちの伝記を並べるべきである」と書き、結論として「教訓=公立図書館の棚を浄化したがる人びとの意見には従ってはならない。彼らは安全弁をふさいでいるようなものである」 (1991年02月) 東京創元社 創元推理文庫 1979刊 |