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施耐庵著 『水滸伝』

 『水滸伝』は、中国の伝奇歴史小説で、梁山泊に集った108人の好漢の物語である。全体としては、108の星が世にはなたれ、星を負う108人が集い、皇帝に許されて天兵となり、星が落ちながら謀反を平定していく、という流れである。

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 とにかく長く、登場人物が多い。そのため、たとえば1973年のテレビドラマ『水滸伝』では、林冲(中村敦夫)と一丈青扈三娘(土田早苗)を中心とし、ストーリーもかなり変えられている(Wikipediaによれば,原案は横山光輝)。また、岩波書店の少年文庫『水滸伝(上下)』(松枝茂夫編訳)では,108人登場はするが,当然、多くのエピソードは省略されている。このあたりは、本家中国も同じようで、長い版(120回本)のほかに、短い版(100回本など)もあり、それらが現れる背景なども、この本(平凡社版)の解説に述べられている。

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 当然のことだが、小学生の頃に岩波書店の少年文庫版を読んだ時の印象とは大きく違った。今回は、とにかく、リーダーの宋江に対してイライラし通しだった。これは,三国志演義の劉備玄徳に対して感じたイライラと似ていて、中国文化の中で、価値があるとされている〈天に認められる正しさ〉――水滸伝では、〈皇帝=天命を受けた人〉に認められたいという宋江の言葉として描かれている――に拘るせいだろう。

 人間は「正しい(とされる)ことをしたい」という欲求をもっているものなので、当然なのだが、ここまで露骨だと何とも……。ただ、正統派のヒーローは〈正しさ〉という錦の御旗を期待されるのだから、宋江の描かれ方は庶民の期待の裏返しなのだろう。

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 水滸伝では、やたらと人が死ぬ。それだけでなく、人を殺してその肉を饅頭にして売るといった場面まで登場するので、現在、『水滸伝』として映画化などする場合には、かなり修正が必要になるだろう。

 とはいえ、108人の好漢は魅力的なキャラクターぞろいである。九紋竜史進は浮世絵の題材となるなど、江戸時代から日本への影響もある。今でも、娯楽作品の原作・原案としての力は大きいと思う。換骨奪胎して、108人のスターが活躍するスペースファンタジーにでもしてくれれば、スケールの大きな娯楽作品になるかもしれない。

(2014年07月)
平凡社・中国古典文学大系
駒田信二訳


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