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神奈川沖浪裏(アダチ版画研究所



スポーツグラフィックナンバー編 『プロ野球 ヒーロー伝説』

 文芸春秋ビジュアル文庫は写真と文章で様々な世界を描いている。その中にプロ野球を扱ったシリーズがあり、本書はそのうちの1冊である。

 このシリーズで扱われる選手はスーパースターが多かったが、本書で扱われているのはスーパースターではない。1年〜数年の間華やかな活躍をしながら、故障などで選手としての寿命が短かった選手たちの姿が描かれている。

 彼らは、一瞬の輝きを見せ、ファンを魅せ、そしてその鮮烈な姿をファンの記憶に残して消えていった。

 彼らの姿は、スポーツ医学などが未だなかった時代の目茶苦茶な状態を表しているとも言えるし、また、ひとつの目的のために自らの犠牲を厭わない日本的な美学を表しているとも言える。短命な選手の姿に何を見るかは、読む人によるだろう。

 目覚しい活躍をしながら短命に終わった選手たちはスターではない。しかし、ファンの記憶の中ではスターよりも鮮明な姿で輝いている。だからこそ、彼らは”ヒーロー”と呼ばれるべき存在なのだ。

(1992年10月)

文芸春秋社
ビジュアル文庫
1992刊


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