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カップの中の羊歯(Paul Bassett



ヘミングウェイ著 『老人と海』


老いた漁師と彼を慕う少年、そして巨大なカジキの数日間。それが『老人と海』である。

老人は長い不漁の後、大物を求めて、一人、小舟で沖へと出る。
若い日々の記憶。老いた体に残る力と技を漁師は信じている。
孤独な老人の針に大きなカジキが掛かる。
一人と一匹はさらに沖へと。やがて、闘いが始まる。

長い死闘。

決着。

老人はカジキに勝ち、自らの力に自信を取り戻す。
カジキと小舟は双胴船のように、ともに岸を目指す。


老人の宝を狙い、サメが現れる。
宝を得る戦いの記憶。老いた体に残る力を振り絞る。
傷つけられ奪われていく宝。

宝を守る戦い。
老いた体は力尽き心が折れる。


老いた漁師は小舟を浜に上げ、眠りにつく。

     ◇

ヘミングウェイの作品は数多い中、この作品でノーベル文学賞を授賞している。
小説・文学の価値・本質は何か? という問いに対する答えの中に「人間の本質を描くもの」がある。
これが正しいか判断するほどの知識も見識もないが、『老人と海』が人間の本質を描いていることは間違いないと思う。
私には私のカジキ、あなたにはあなたのカジキがあり、それぞれの闘いがあるのだから。

『老人と海』は、映画化もされている。
原作を超える映画もある一方で、原作の魅力を台無しにする映画も多いが、『老人と海』の場合、小説を読んでから映画を見ても、映画を見てから小説を読んでも、その魅力を減じることはないと思う。


(1990年02月に書き2013年08月に直す)


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