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松沢哲郎著 『チンパンジーから見た世界』
この本は、「アイ」というチンパンジーを中心としたプロジェクトの結果(アイを中心としたプロジェクトは現在も続いている)を紹介している。
アイは「脱走」でニュースになった過去をもつが、今は、息子の「アユム」との姿が有名だろう。 この本が扱っているのは、コンピュータディスプレイを利用した人工言語をアイに学習させ、チンパンジーのもつ知覚・認知機能の基本特性をヒトのそれと比較する(比較認知科学という)というプロジェクトの結果である。 実験結果を示しながら議論を進めているので、実験データとの付き合いの経験の無い人には少し読みにくいかもしれないが、内容的には人間性を理解する上で興味深いものだと思う。 類人猿に言語を教えた実験を扱った本には『ココ、お話しよう』(どうぶつ社刊)もある。こちらはゴリラに手話を教えた研究についての本である。 (1992年04月/2009年07月) 東大出版会 認知科学選書(1991刊) |