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守屋洋著 『「三国志」 英雄たちの戦い』
三国志史上有名な4つの戦い――官渡の戦い(曹操VS袁紹)・赤壁の戦い(曹操VS劉備・孫権)・夷陵の戦い(劉備VS孫権)・五丈原の戦い(孔明VS仲達)――について、戦術・戦略・外交・政治といった面から歴史を振り返っている。
ところで、「三国志」は有名なのだが、何シリーズくらいあるか知っていますか? まず、吉川英治氏の小説がある。日本では「三国志」を読んだことがあるといった場合の大半がこれだろうと守屋氏は言う。さらに、平凡社から出ている「三国志演戯」(立間祥介訳)があり、文庫本「完訳・三国志」もある。さらに、現在ビジネス・ジャンプにも連載(小説)があるし、横山光輝の漫画もある。 が、これらは正史ではない。それぞれに多くの創作を含み、イメージを膨らませて創られたそれぞれの世界になっており、楽しめる。ところが三国志を歴史として考えようとする場合、創作に準拠するのはいかにも拙い。実際、三国志をもとにした”人生訓”を垂れる人の中には、創作部分を引用する人が多いと、守屋氏は言っている。守屋氏は、数多くの「三国志」ものを出版しているが、すべて正史に準拠している。その意味で、読んで楽しく信用もできる、というお得な本である。 (1992年10月) PHP研究所 文庫 1992 |