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ユネスコ・アジア文化センター編 『アジアの昔話 1』アジアの各国の昔話を日本語に訳(松岡亨子訳)したものを集めたシリーズの第一集である。このシリーズは、ユネスコが決めた国際図書年(1972年)に 「アジアの国々は、アジアの人々がおたがいにもっと理解しあって、平和にくらしてゆくために、アジア人のための共通読み物を、アジア人の手で作ろうという話し合いをしました。そして、まずアジアの子どもたちが共通に読める、楽しく美しい本を作ることから始めようということになりました。(中略)そこでまず、美しいさし絵のはいった昔話の本を出すことになり、イラン、パキスタン、スリランカ、インド、バングラデシュ、タイ、ラオス、ネパール、クメール、南ベトナム、マレーシア、シンガポール、インドネシア、フィリピン、韓国、日本の十六の国がこの計画に参加することになりました。 この第一集に収められているのは「すずめとからす(バングラデシュ)」「かしこすぎた大臣(インド)」「旅のなかまのトラ退治(朝鮮)」「小石投げの名人タオ・カム(ラオス)」「赤い丘(シンガポール)」「マカトのたから貝(タイ)」「ドシュマンとドゥースト(イラン)」「カオ兄弟の物語(ベトナム)」の8作品である。読んでみると、それぞれ日本の昔話に似たような話があるような、無いような気がしてくる。 私たち日本人はグリム童話やアンデルセン童話みたいにヨーロッパの昔話はよく読んでいる。しかしそれ以外の世界、つまりアフリカやアジア、南北アメリカ(白人のアメリカではなくて)の昔話となるとアラビアン・ナイトと中国のお話がせいぜいのところだろう。その意味でこうした作品を是非とも読んで欲しいし、教科書などにももっと数多く載せられて欲しいものだと思う。なお、このシリーズを出版しているユネスコ・アジア文化センター(ACCU)は他にも、アジア・太平洋の音楽のテープ・CDを出したり、ACCUライブラリーを運営するなどの活動をしています。 (1991年05月) アジア地域共同出版計画会議企画 福音館書店 1975刊 |