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柳田邦男著 『発想の現場』6人の科学者へのインタビューを収めた本書は、冷たい印象を与えがちな科学者がいかに人間的な存在であるかを描きだしてくれています。長谷川博氏(第1章)は外科医。この長谷川氏と杉田製作所のおやじさんとのエピソードには、科学者が人間同士のつながりの中で仕事をしていることが生き生きと映しだされています。 渡辺格氏(第2章)は分子生物学者。DNA操作などを含む最先端の学問の日本における草分である。 上田誠也氏(第3章)は地球科学が専門。上田氏は、大陸移動説やプレート・テクトニクスなどを扱う学問を戦後一貫して学んでいる学者で、『新しい地球観』(岩波新書)という著書もある。 樋口敬二氏(第4章)は氷雪物理学専攻。素人には夢物語にしか思えない宇宙雪氷学を本気で語っている。 早川幸男氏(第5章)は天体物理を研究している。もともとは宇宙線や素粒子を研究していたのが、どういう経緯で天体を扱うようになったのか……。早川氏は「人類の生きるのは、ぼくはいままでの調子でいったら、二、三百年だと思います」と言う。では、なぜあと二、三百年なのか……それはご自分の目でどうぞ。 | 橋本邦衛(第6章)は安全人間工学者。事故の責任を運転者など人間の“ミス”だと安易に決めつけて安心してしまう風潮に異を唱えているその主張は説得的です。 学者とか研究者と言われる人たちが自分のやってることを語る時ってほどんど子どもにもどっちゃってるんですよね。とにかく「やりたい」っていうその思いだけが原動力になる世界だからでしょうか……。 (1993年01月) 講談社文庫 1984刊 |