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壁の向こう(根津美術館



レビンソンとリンク著 『刑事コロンボ18 権力の墓穴』

 本書は、テレビ映画シリーズを小説化した作品である。コロンボ・シリーズはテレビ映画のためのオリジナルシナリオとして書かれ、ピーター・フォーク主演でドラマとして作られているのだそうで、そのシナリオから逆に小説にしているわけである。

 コロンボ・シリーズは上に書いた点で少数派なわけだが、このシリーズが他の推理小説と比べた場合に珍しい点がもう一点ある(コロンボ・シリーズが推理小説かどうか疑問に思う人もいるだろうし……)。それは、刑事(探偵)が犯人を知らないのに、読者が犯人を知っている点である(このことは既に多くの人が指摘していることだから威張るわけにはいかないけれど)。つまり、今ここで「犯人はコロンボの上司の○○だよ」と書いても、作品を読む上で何の問題も起こらない。これは推理小説としては異例のことであろう。”犯人当て”を基本としている推理小説が多い中、犯人を知っている読者を、なお惹きつけるだけの内容をコロンボ・シリーズは持っていなくてはならないのである。

(1993年01月)

笹村光史訳
二見書房
1975


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