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壁の向こう(根津美術館



羅貫中著『三国志演義』

「三国志」には、魏呉蜀の三国に関する歴史書「正史」と、魏呉蜀を舞台にした歴史小説「三国志演義」がある。しかし、「三国志」と言えば「演義」の方を指すのが普通になっているので、歴史書の方を「正史三国志」と表すことが多い。

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で、三国志演義。桜園の誓いにはじまる全120回にわたる長編ドラマで、小説(吉川英治さんの三国志)やら漫画(横山光輝さんの三国志)やら映画(たとえばレッドクリフ)やらゲームやらの題材となっている。

吉川三国志では、諸葛孔明の死(第104回)以降を大幅にカットしている。その是非は論じても意味はないのだが、「演義」を読むと、それ以降は盛り上がりに欠ける印象は否めない。しかし、「演義」のもつ〈一つのものは分かれ、分かれたものは一つに戻る〉という大きな流れも捨てがたい。

横山さんの作品は単行本60巻という長編だけれど、諸葛孔明が五丈原で死ぬ(第104回)のが59巻。演義の残りを1巻にまとめているので大幅にカットされている。横山三国志は吉川三国志をベースにしているのだが、流れも捨てがたかったということだろうか。

曹操を主人公とした漫画「蒼天航路」は「演義」と世界観が違うので、好き嫌いが出るかと思う。

赤壁の戦いを描いたレッドクリフを見ると、この時代の戦いにおける「陣」の意味が具体的にわかる。個人的には、赤壁の戦いを描くなら、関羽が曹操を許す場面(第49回)までと思うけれど、それは趣味の問題。

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三国志の「正史」は西暦280年以降に成立とされるが、「演義」をまとめたとされる羅貫中は14世紀半ばの人で、その間に、さまざまな形で楽しまれていた講談のようなものがあったことが想像できる。当然、日本にも入ってきていたわけで、江戸時代にも「三国志」は題材になっている。

その一つが浮世絵。幕末の浮世絵師・歌川国芳は、三国志の英雄を一つずつ描いた「通俗三国志英雄之壹人」というシリーズを制作している。

(2013年08月に書く)

立間祥介訳
平凡社


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