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粋な柄(アサガオ研究室



近藤唯之著 『プロ野球 トレード光と陰』

 プロ野球のことを知らない人には、おもしろくもなんともないと思います。が、プロ野球のファンにとってはなかなか読みごたえのある本でした。

 トレードというのは、(職業の自由や基本的人権との関わりで)問題の多い制度であるとされています。経営者側が一方的に「明日からあっちの球団に行け」と言えるという制度で、選手の側からすれば、断ればクビということになる。

 トレードは、よくサラリーマンの転勤に喩えられますが、実態はかなり違うようです。まず、サラリーマンの転勤の場合(手当などは違うらしいけれど)、基本的な給与体系は同一でしょう。ところが、野球選手のトレードの場合、行った先の球団によって給与(年俸)に大きな差が出てしまうことが、まま、ある。

 もし、サラリーマンが、どの支社に行くかによって、業種が同じで、業績が同じでも、給料が違うとしたら、相当に問題になるでしょう。しかし、会社が違えば、業種が同じで業績が同じでも給料が違ってもあたりまえとされるでしょう。野球選手のトレードは、つまり、転勤というより転・会社なんですね。しかも自分の希望とは関係なく、会社の側から一方的に行けと言われる……。その意味で、出向に近いかな。

 こういう、問題のある制度ではありますが(あるが故に?)、トレードというのは様々なドラマを生んできています。それらをスポーツライターの近藤氏が、表と裏の両方から描いている、それがこの本です。

 収録されているトレードのうち有名なものを挙げると、次の通り。

  山内(大毎) ←→ 小山(阪神)
  金田(国鉄→読売)
  江本(東映→南海)
  張本(東映→読売→ロッテ)
  江夏(阪神→南海→広島→日本ハム→西武)
  野村(南海→ロッテ→西武)
  田淵(阪神→西武)
  落合(ロッテ) ←→ 牛島・上川・平沼・桑田(中日)
  門田(南海→オリックス→ダイエー)

 いずれもドラマチックです。

(1991年12月)

新潮社
文庫
1991


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