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神奈川沖浪裏(アダチ版画研究所



西川潤著 『食糧:21世紀の地球』

 『貧困』『人口』『食糧』の3部作のひとつである。

 この本も、『人口』と同様、現状(1983年時点)とその後の予測、とるべき態度・方針といったことが述べられている。
 だが、私にとって最もインパクトがあったのは、「4 多国籍企業とアグリビジネス」である。アメリカの5大メジャー(農作物を扱う5商社)が如何に農業を食い物にし、莫大な利益をあげているか(文字通り搾取だ)。そのやり口が如何にえげつないか。
 淡々と書かれてはいるが、読んでいると腹が立ってくる(余談だが、米の自由化の圧力もアメリカの農業経営者というよりは、農業商社の都合という部分が大きいのだという指摘を新聞で読んだ記憶がある)。

 CMの弊害についても次のような言及がある。

「世界保健機構(WHO)は、一九七四年に、途上国において乳児用流動食の売上げ増加に警鐘を発した。これは人工的な乳幼児食が母乳よりもすぐれた効果を子供の生育に及ぼすかのような宣伝が行なわれ、哺乳びんや人工食で育てられた多くの赤ん坊が栄養不良から病気にかかったり死亡したりする現象が目立ってきたからである」。

 これに類することは日本の企業(味の素)にもあり、味の素が栄養満点で子供の成長を促すかのような宣伝をして、誤解をばらまき栄養失調を生んでいるという批判を受けている。なんでも「味の素シンドローム」(味の素の過剰摂取が原因で生じる)というものまであるらしい。(この味の素に関する言及は記憶に基づいているので、細部については正確でないかもしれない。詳しく知りたい人は船瀬俊介著『味の素はもういらない』三一書房を参照してください。)

(1991年12月)

岩波書店
岩波ブックレットNo.27
1983


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