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品川駅の夜(伊吹 唯



尹健次著 『異質との共存 戦後日本の教育・思想・民族論』


タイトルは『異質との共存』だが、この本は、現代の日本人が「異質」と「共存」できないことを浮き彫りにしている。

日本人にとって“非日本人”つまり「異質」は“日本人ではない”故に、排除の対象となる。もちろん、個々の日本人の一人一人が、意図してすべての異質を排除しようとするわけではない。しかし、法のような制度や社会的な慣習のレベルでは、日本は間違い無く「異質」を排除している。そのことを突きつけてくるのがこの本である。

しかし、「異質との共存」を日本人に要求しているのではない。話はそんなに単純ではない。この本は、次のような問いを発している。

「果たして日本人にとって日本社会は居心地のよい社会なのか?」
「日本社会は日本人に対してやさしい社会なのか?」

あなたはどう答えるだろうか。

     ◇

この本は、日本人と日本社会が「異質」と共存できるようになれば、それは日本人にとっても望ましいことのはずだと述べていもいる。その主張には耳を傾けるべき価値があったはずだ。

この本が出版されてから四半世紀。

日本人は「異質」と共存できるようになったか?
日本社会は日本人にとって居心地のよい社会になったのか?
日本社会は日本人に対してよりやさしい社会になったのか?

私は「ノー」と答えざるを得ない。

だとすれば、今でも読むべき価値が高いだろう。

ただし、文章は少々読みにくい。論文として発表したものをまとめて単行本にした本なのでしかたないのだが、その点は残念である。

(1991年03月に書き2013年08月に直す)


岩波書店
1987

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