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品川駅の夜(伊吹 唯


安本美典著 『朝鮮語では「万葉集」は解読できない』

 これは本と言うよりは、小冊子といった方がいいかも知れない。まあ、どう呼ぼうとたいした問題ではありませんが。内容は、「万葉集の朝鮮語による解読」に対する批判です。

 特に取り上げられているのは、藤村由加『人麻呂の暗号』と李寧煕『もう一つの万葉集』、朴炳植『日本語の悲劇』の三冊で、これらの内容がいかに学問的ではなく、こじつけであるかを論証しています。そして安本さんのとっている方法が科学的・学問的であることが主張されます。確かに、学問的なのだろうと思わされますし、批判もしにくい(無いわけではないですが)ようです。

 この本で言われていることなのですが、仮に朝鮮語と日本語が同じ源から分かれたとしてもそれは七千年から一万年前であると推測されるのです。すると、それは縄文時代になるわけです。日本人の起源を考えるときにこのことは重要なポイントになるだろうと思います。なぜなら、朝鮮半島から稲作がもたらされ(これにも異論があるようです)、弥生時代に移っていくとされる訳ですが、その渡来人たちの影響は少なくとも言葉を朝鮮語にするほど大きくはなかったことになるからです。

(1990年04月)

JICC出版局/宝島社
1990

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