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黒岩重吾著 『夜の遺書』
表題作を含む6編を収録している。
「夜の遺書」はアルサロ勤めの姉と高級クラブに勤めた妹の生活が描かれている。「冷凍の部屋」は照江という売春婦が一人の男と出会いそして別れるまでのドラマである。「通天閣」では賭事師として生きている一人の男が子どもの修学旅行の費用を稼げない自分の姿に愕然とし、再びまっとうな生活へ戻ってゆく。「花と泥の間」ではゲイボーイ照一の生と死が淡々と書かれ、「さ迷える魂」には人間性を失った医師に翻弄される中年の看護婦の姿がある。「花狩りの絵」の主人公のサラリーマンは自分の努力とは無関係に女の言葉によって運命を振り回される。 (1992年11月) 角川書店文庫 1969刊 |