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横溝正史著 『八つ墓村』「祟りじゃ〜。八つ墓の祟りじゃ〜」このフレーズで有名になった映画の原作である。 いかにも横溝作品といった雰囲気を持った作品だ。ところが、映画は、原作の良さを完璧なまでに殺している(と私は思う)。 重層的な人間関係や、愛憎関係、そして犯人が殺人計画を実行していく動機。 そうした全てにおいて原作のリアリティや深みが消えているのである。 そして映画では殺人の動機を”先祖の霊”などという推理小説のタブーに持っていって誤魔化している。いくら映画は原作とは独立の作品とは言うものの、これでは横溝氏は泣くに泣けないだろうな。 (1992年10月) 角川書店文庫 1971刊 |