ぴゃんの本棚



品川駅の夜(伊吹 唯



横溝正史著 『悪霊島』 (上下)

 「鵺のなく夜に気をつけろ」(本当は「鵺」の字が違う)というダイイング・メッセージが、幾つもの絡みあった謎を解くキーワードのひとつになっている作品。

 鹿賀丈史・岩下志麻主演で映画化されています。

 上巻では殺人が次々と起こり、読者は謎が解けないまま不安な状態に置かれてしまい、「結果を知るために下巻を買おう」という気にさせられてしまう……。というわけで上巻は、地下鉄の駅にある無料貸し出しのところで借りたのだが、結局下巻は買う羽目になったのでした。

 巴御前と呼ばれる女性と、彼女を愛し何とか自分のものにしようとする越智竜平との関係が事件の根となっています。俗っぽい(二流の?)評論家なら「女の性(さが)」とか「女の業」とか、いうところかもしれません。

 私の目から見ると、どうも横溝氏の女性像が、いわゆる“男の持っているイメージ”になっている。もちろん、作品の登場人物の性格なのですから、それでも構わない(と言い切れるのかなぁ)し、作品が書かれた時代を考えれば仕方がないんでしょう。

 ですが、こういうステレオタイプ、「いかにも」な内容にされてしまうと……。
 まあ、推理小説に“フェミニズム”を求めてもしかたがないんですがね。


(1992年12月)

角川書店文庫
1981刊

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