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品川駅の夜(伊吹 唯



横溝正史著 『獄門島』

 推理小説の紹介をする時に、トリックの中心を書いてしまうのはタブーなのだが、この作品はダブル・トリックであるし、原作・映画とも有名なので勘弁して欲しい。

 表のトリックは、3人姉妹が松尾芭蕉の俳句に見立てた殺され方をするという事件そのものである。このトリックをいかに金田一耕助が解き明かすか。これが表の作品である。

 この表のストーリーでは、3人姉妹を殺すことは犯人にとって意味がある。

 ところが、この作品の凄さは、作品の最後の最後で、この犯人にとっての大義名分が全てひっくり返るところである。表のストーリーが作者VS金田一耕助であるとしたら、この裏のストーリーは作者VS読者なのである。

(1992年10月)

角川書店文庫
1971刊

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