|
倉橋由美子著 『幻想 絵画館』
この本は、20の古今東西の名画からイマジネーションを広げて倉橋さんが書いた短編小説を集めたものです。24cm×19cm(見開き24cm×38cm)と大判で、カラー印刷の名画を併せて載せる趣向になっています。ジャンルを問わず絵画が好きな私としては、とても楽しめる本でした。水割りを飲みながら寝床で1〜3作品ずつ読むという、贅沢な読み方をして楽しみました。
収録された絵画は キリコ 「神秘的な動物」 デュビュッフェ 「ピフル通り」 與謝蕪村 「夜色樓臺雪萬家」 青木木米 「化物山水図」 ボナール 「サントロペ湾」 ゴッホ 「星月夜」 クレー 「選ばれた場所」 呉歴 「岑蔚居産芝図」 王原祁 「倣元四大家山水図」 ルソー 「眠れるボヘミア女」 デルヴォー 「町のあけぼの」 クリムト 「林檎の樹T」 石涛 「黄山図巻」 高山辰雄 「穹(Sky)」 アンソール 「仮面たちに囲まれた自画像」 デュフィ 「黒い貨物船」 浦上玉堂 「青山紅林図(煙霞帖その八)」 マティス 「赤いアトリエ」 オキーフ 「フラワー・アブストラクション」 クレー 「灰色のものと海岸」 芸術は学ぶよりも経験することの方が大切だと思います。何を快く感じるか。何を不快に感じるか。どんな絵が楽しいか。どんな絵が気に入らないか……。そこには、理屈は要りません。しかし、何故かは知りませんが「絵画はわからない」という言い方をする人がかなりいます。そうした人たちは、絵画を「理解する」ものだと思ってしまっている(思わされてしまっている)のでしょう。でも、絵画は「経験する」ものだと思います。この倉橋さんの本のような形で絵画と出会うのも、素敵な出会い方だと思うのでした。 (1992年02月) 文芸春秋社 1991刊 |