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倉橋由美子著 『ヴァージニア』
3つの作品(1968〜70年)を収録している本です。
表題作〈ヴァージニア〉はヴァージニアという女性とわたし(倉橋氏を思わせる)が出会い、わたしがヴァージニアという人間を知ってゆき、やがて別れる。さまざまなエピソードを通してヴァージニアという人間が語られてゆく。 〈長い夢路〉は父啓作の臨終に帰宅した「まり子」の意識と、父啓作の意識とが作品をつくっていく。死を目前にした人間と、その人間を外から見守る人間。意識は時間を超え、所を超え、さまざまに広がってゆく。 〈霊魂〉は、死病に冒された婚約者KとMとの心の交流が描かれる。死んだKは霊魂となってMのもとへ現われる。MはKの霊魂と戯れ、やがて結ばれる。そして……。 (1992年02月) 新潮社文庫 1973刊 |