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倉橋由美子著 『シュンポシオン』
『ポケットアンソロジー 恋愛について』のところで書いたような種のせいで倉橋由美子という作家に興味を持ったので、その人の恋愛小説を読もうと思いました。恋愛小説を読もうと思ったのは多分うまれて初めてでしょう。それで何となくこの作品を選んだわけです。
この作品は21世紀の避暑地での幾つかのペアの愛を描いたもので、幻想的というか非現実的な(リアルでない)雰囲気を持っていました。それにしてもこれは読むのがしんどかった。多分おもしろくなかったのでしょう。ただ、そう言いきってしまえない何物かが在る小説なのです。ただそれが何かはよく判らない。このことと多分関係すると思うのだけれど、解説(小説のうしろについている解説はつまらないし、役にたたないのが普通なのであるが)で三浦雅士が「(前略)あるいはこれを、『シュンポシオン』は読者に選ばれるのではなく読者を選ぶ小説だという表現で述べてもよくて(後略)」なんてことを書いているのが印象的でした。ただし、この部分は、私の感じていることは三浦氏の言いたいことと明らかにはずれていると思われます……。 (1990年08月) 新潮社文庫 1988刊 |