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粋な柄(アサガオ研究室



倉橋由美子著 『夢の浮橋』

 「男と女」。

 倉橋氏の作品の中では、このテーマはある独特の位置を占めているようである。倉橋氏自身の男女関係に対する考えは、中村真一郎編『ポケットアンソロジー 恋愛について』に収められた倉橋氏の文章ていどのことしか知らないので、よくわからない。が、作品の中でのそのイメージには、「不確実な」「脆い」「冷たい」「甘い」「消える」「異常な」……といった形容詞を付けたくなる。

 この作品で扱われているのは、「夫婦交換(スワッピング)」という形態の「男女関係」と「サディズム−マゾヒズム」という行為の形態、「近親相姦」という関係……。それらは決して「確実で」「安定した」「温かい」「普通の」愛ではない。しかし、描かれる関係は不愉快なものではない。それは、倉橋作品が醜くなってしまいかねないテーマを「透明感」のある「虚構」として描いているためだと思う。どちらにしても「大人の為の」作品だろう。

(1991年12月)

中央公論社文庫
1973刊


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