|
倉橋由美子著 『倉橋由美子の怪奇掌篇』
倉橋文学が最近流行っているそうな。以前紹介した『大人のための残酷童話』や本書がなかなか売れているのだそうだ。が、それはもっともだと思う。とにかく小説というか文学とは、本来こういうものなのではないかと感じている。
とにかく最近ではもっとも気に入っている世界である。筒井康隆も独特の文学世界・小説世界を構築していると思うが、倉橋由美子はそれ以上に独特な文学世界・作品世界を構築しているような気がする。文学あるいは小説の世界は虚構であり、虚構であることを十全に全うしているという意味で、すばらしい。倉橋氏の、冷たく、金属的・中性的で、真空ではないかと思わせる独特の世界に魅了されると、リアリティは虚構であることを前提に成立するのだとつくづく感じます。 (1991年09月) 新潮社文庫 1988刊 |