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倉橋由美子著 『ポポイ ποποι』
『怪奇掌篇』と同じく、冷たく、金属的・中性的で、真空ではないかと思わせる独特の世界が展開されています。“生きている首”を預ることになった舞という女性を主人公とする作品です。彼女は首をポポイと名付けます。そしてポポイと彼女、そして彼女をとりまく人々との関わりが、中性的に描かれていきます。『怪奇掌篇』の方が読んでいて面白いですが、それは掌篇と中編という違いのせいかもしれないし、またこの作品がもともとラジオドラマとして書かれたということによるのかもしれない(つまり読まれるより演じられると、魅力が発揮されるのかもしれない)。
ともかく、読んでいて楽しい世界ではありませんが、魅力的な……危険な魅力に満ちた……世界です。 (1991年09月) 新潮社文庫 1991刊/単行本は1988刊 |