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筒井康隆著 『ウィークエンド シャッフル』さて、筒井康隆についてはきっと作家論や作品論がたくさん出てるんでしょうが、興味がないので、世の中でどういうことが言われているのかは全然知らない。個人的には、〈リアリティの無いリアリティ〉というか、〈非現実の現実感〉というか……、なんとも言えないリアリティが魅力ですね。それは、ノンフィクションと呼ばれる作品――ルポルタージュや伝記――の持つリアリティとは対極にあるリアリティ。小説を初めとする文芸作品は、日常生活や現実世界で実際に起こった、あるいは起こり得るという意味でのリアリティは必要ないのだということを、筒井作品から伝えられる。 と、ここら辺を書いている時に、映像作家(ディレクターだったかシナリオライターだったか)が次のようなことを書いていたのが頭をよぎった。 視聴者は、小説の中の荒唐無稽なありえない話は許容し自然に受け入れるが、実際の人間が動き、声を出す映像の場合には、許容しない。だから、映像作品として創る時には、文字の作品から、不自然な部分をカットしたり、合理化をしたりするのだ、……。 (1991年10月) 講談社 文庫 1978 |