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筒井康隆著 『おれの血は他人の血』新幹線の中で読了したのが筒井康隆著『おれの血は他人の血』。この作品はいかにも筒井氏らしい「血」と「暴力」と「犯罪」と「ひと死に」とが、どこか非現実的な世界の中で展開する中編小説である。小説を読むとついつい作品に引きこまれて楽しむことが先にたち、少し離れた視点から技術的なことを分析することができない“良い”読者なのに、最近腹が立つ。 「さ、分析しつつ読むぞぉ」 などと意気込んで読み始めても、気がつけばしっかり楽しんでしまっている。 これがプロの作品の力というものなのか、と自分を振り返って腹が立つ。 分析しつつ読もうとする読者を引きこむ力どころか、楽しもうとする読者を引きこむ力さえ怪しい自分に腹が立つ。 などと比べたりしたら失礼なのはよく判っているのだけれど……。 (1993年08月) 新潮社 文庫 1979 |