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精子発見のイチョウ(小石川植物園



筒井康隆著 『言語姦覚』

 この本は、筒井ワールドの創造主ヤスタカ神が人間の言葉をどのように感じているかを述べている預言書である…………と、つまらない冗談はこっちに置いて……。
 この本は小説ではない。まあ、評論と言って間違いないだろう……と思う。

 「現代の言語感覚」というサブタイトルの下の4編の評論は、現代盛んに使われている言葉(例えば「あのですね」とか「その時点で」とか)について、どういう心理が背後に隠れているのかを分析する「現代の言語感覚」に、自分の小説において用いている「ハナモゲラ語」を分析する「虚構におけるハナモゲラの自己完結性」。
 楽しいのが3つめの「歌謡曲の奇怪なイメージ」。歌謡曲の歌詞を聞いているととんでもないフレーズに聞こえてくるというのである。

   濡れて粉糠と 木にかかる
   見上げる言うや 毛の空に
   その時心 罠に顔 離すだろう

 それぞれ誰の何という歌かわかりますか?

 「現代の言語感覚」の他は、文学周辺を扱った評論が並ぶ「超虚構宣言」、演劇をめぐる評論を集めた「しあわせ座長」、日本社会を皮肉っている「A型社会の弊害」(ここにもニヤっと笑える面白いものが多い)、最後が自分の記憶をたどりつつ論じるものがいくつも含まれている「タンク・タンクロー賛」と5つのサブタイトルがある。

(1993年03月)

中央公論社
文庫
1986(単行本1983)


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