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精子発見のイチョウ(小石川植物園



筒井康隆著 『虚人たち』


筒井康隆さんの実験的小説。でも、何がどう実験的なのかだけでなく、あらすじも、作品の中身については何も紹介しません。その方が筒井さんの実験的手法に純粋に驚けて良いと考えるからです。

私自身は、『着想の技術』という本の中に収録されている「虚構と現実」・「『虚人たち』について」という文章を読み、この作品を知りました。この「『虚人たち』について」の出だしにこんなことが書かれています。

「作者としては、(中略)今までの小説にない面白さを求めて、従来の小説の手法以外に、もっと面白い手法があるのではないかと考えた末、それまでにすでに考えついていた様々な実験的手法を、この比較的うすい本(『虚人たち』)の中へ一度に全部ぶちこんだ、というに過ぎません。」

これを読むと、筒井康隆という作家がどんな実験をしたのか知りたくなりませんか?

私は読みたくてたまらなくなり、ネットで本を買う時代ではありませんでしたから、ひと月くらい、あちらこちらの本屋を探して、やっと見つけました。それくらい売れていなかったのです。話題にはなったが売れなかった実験的作品。今読んでも、ほんとうに刺激的です。


ただ一つ、個人的に残念なのは、「虚構と現実」・「『虚人たち』について」という『着想の技術』の中の文章を先に読んでしまったことです。まず、小説を読む。驚く。解説を読んで膝を打つ。この順番が良いと思います。

(1990年06月に書き2013年08月に直す)


中央公論社
文庫
1984



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