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筒井康隆著 『メタモルフォセス群島』表題作をはじめとする11作品を含む短編集である。まず”普通ではない”状況におかれた人間が描かれている作品がある。『五郎八航空』『走る取的』『定年食』『特別室』『メタモルフォセス群島』といった作品だ。 “常識に反した人間”が登場するのが、『毟りあい』『喪失の日』。 『母親さがし』はすこし間の抜けた男が主人公である落語のような作品。 『平行世界』という作品は、自分の世界と平行に、無数の同じだが微妙に違う世界が生じるという話である。その上の方から主人公が下へ下りてくる。その主人公が下の世界の主人公のところへ現れて……。 『老境のターザン』は年老いたターザンが、観光客相手にジャングルの英雄・・正義の味方・・を演じるのに疲れ、「悪」に目覚めるというパロディっぽい作品。 『こちら一の谷』は、義経の一の谷攻略が舞台となっている。この作品では、小説の「虚構」としての性質というものが強調されていると思う。 というような本で、楽しむための読書には手頃ではないでしょうか。 (1991年06月) 新潮社 文庫 1981 |